【質問】平成29年の税制改正で、どのように配偶者控除の制度が変わったのでしょうか。
【回答】配偶者特別控除の限度額がアップし、配偶者控除に所得制限が設けられます。
概要
配偶者は、就業時間を調整することで納税者本人の配偶者控除が適用される年間給与103万円以内に抑える傾向があると指摘されてきました。103万円超えによる世帯合算での手取額が減少してしまう逆転現象を回避する行動です。いわゆる、103万円の壁です。とはいえ、実際には従来の配偶者特別控除で103万円の壁は解消済みだったのです。しかしながら、依然としてパートタイマーの方々が103万円の壁を意識し、就労時間を調整しています。
問題は、①103万円超で配偶者控除が適用されなくなるという意識(実際には配偶者特別控除が適用されるため逆転現象は生じない)があること、②多くの企業が配偶者手当の支給基準を103万円に設定しているため現実的に手取りが減少する、の2点にあるようです。
人口減少に伴って人手不足を感じている企業も多く、パート収入を一定の範囲内に抑えるため就業時間を調整する傾向は、最低基本賃金が引き上げられるにつれ、さらに強まることも考えられます。この緊急の課題に対応するため、所得控除が適用される上限を給与額150万円に引き上げるとともに、世帯の手取収入が逆転しないように配慮した所得控除の仕組みが設けられました。
検討事項
もちろん、良いことばかりではありません。配偶者控除は、所得が1,000万円を超える居住者について適用されなくなりました。これは配偶者特別控除の拡大によって減少する税収を補てんする目的のようです。
法人にとっても経理処理上の手間が増加します。配偶者控除・配偶者特別控除の運用が複雑化されたため、会社は、配偶者のパート収入金額のより正確に把握しなければなりません。一方、パート従業員の年間推定給与の証明書を求められるケースが増加することも考えられます。
脚注
①本文は平成28年12月27日現在の税制に基づいて作成されています。