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事業承継のポイント

 

【質問】事業承継のポイント

 

大阪市内で不動産賃貸業を法人経営している経営者です。私は70歳を超えて無理がきかない身体になってきたので、そろそろ経営を息子に譲り、第一線から退こうと考えています。

 

 というものの、息子は大手企業のサラリーマンであり、不動産賃貸業を手伝わせたこともなく、全くの素人です。当然法令や税務の知識も持ち合わせていません。ただ、息子が勤務する会社の経営状態は芳しくなく、早期退職を大量に募っているそうです。もちろん息子は現状に満足しておらず、本人も事業承継に前向きで、宅建業の勉強を始めました。世間一般では、事業承継はなかなかうまくゆかないといわれています。このような背景を含めて不動産賃貸業の事業承継における留意点を教えてください。

 

 

 

社員:役員1名、従業員2名の計3名

損益:売上高約1億円、当期利益1800万円

代表者報酬:1200万円

資産負債:借入金0円、預かり保証金5000万円、保有キャッシュ1.5億円

賃貸マンション1棟(45室)

 

 

【回答】ポイントは収益を生む事業かどうかと本人の適正です

 

 ご質問者も懸念されている通り、中小企業の事業承継は難しく、成功裏に収まるケースは50%以下、あるいは30%程度とも言われています。私自身も、事業承継がうまくゆかず清算に至った法人を多く見てきました。不動産賃貸の事業承継について、その留意点等をご説明したいと思います。

 

 

 

収益を生む事業

 

 今現在、収益を生み出している事業は七難を隠すうえ、次の一手が打ちやすくなります。経営上、不動産業界の取引慣行や法令の知識習得は必須でしょうが、十分な収益を計上している事業であれば、次期経営者の修行期間中に生ずる余分なコストにも耐えられます。また、必要に応じて弁護士・司法書士・税理士などを参謀役に就かせることも可能でしょう。

 

現経営者の羽振りの良い暮らしを見ていれば、事業承継者は会社を継ぐ意欲がいやがうえにも湧いてくるというものです。反対に、赤字が継続し借金だらけで資金繰りに苦しむ現経営者の姿を見て、「事業を引き継いで立て直してゆこう」と考える人は稀であり、多くの人(子供達)が逃げ出してしまうのは当然の成り行きだと思います。

 

 ご質問者が経営する法人は、経営成績・財政状態ともに申し分なく、業界に不案内なご子息であっても、経験を積ませる際に発生する投資や失敗に耐えうるだけの体力を有しているようにお見受けします。