【質問】法人へ不動産の遺贈を検討中です
不動産賃貸業を営んでおり、自分自身の相続を見据えて法人を設立しようと考えています。なぜなら、私が所有する賃貸不動産(土地、マンション、アパート、駐車場)を法人の持ち物にしてしまえば、妻や娘たちはその法人から給料を支給できるからです。
また、私の相続に際し、この不動産を法人に遺贈してしまえば、法人には相続税がかからないそうですので節税効果があるはずです。さらに、法人に遺贈してしまえば遺産分割で揉めることも避けられるのではないのでしょうか。
【回答】法人への遺贈はメリットもデメリットもあります一
不動産オーナーの方々が不動産管理会社を設立されているケースは非常に多く、沢山のメリットがあります。とはいえ、遺贈で不動産を法人名義に変更されることはお勧めできません。
相続の際、法人への不動産遺贈は相続税がかかりませんが、法人には法人税が課税されます。さらに、御質問者については、法人への遺贈は法人に対し不動産を時価譲渡したものとみなされて所得税が課され、被相続人は準確定申告をしなければなりません。
法人は個人と違い恒久的に不動産を所有することが可能であるため、個人の手を離れる際に不動産の含み益に課税しておこうという趣旨によるものですが、法人税と所得税とを2重課税されたかのような錯覚が生じ拒否反応が生じがちです。法人への遺贈が僅少なのはこの課税体系が影響しているからではないでしょうか。
その一方、不動産管理法人には多くのメリットがあります。
御質問者が述べられておられるように、法人の所有以降は、相続財産から外れ、所有権移転登記を回避できます。人にはいつか相続が生じますが、法人は財務体質しだいで恒久的運営が可能だからです。
上記デメリットがあったとしても、御質問者が「それもでもやはり不動産管理会社を設立したい」とお考えであれば、法人へ不動産を遺贈するではなく、不動産を売買されたら如何でしょうか。
新設法人は一般的に資力有しませんが、ご質問者から法人に対し取得資金を融資したならば、不動産取得が可能になるのではないでしょうか。法人に不動産賃貸収入が生じますので、役員に就任したご家族に相続開始を待たずに役員報酬を提供することができます。一部を御質問者に返済してゆけば、貸付金もいずれ解消してゆくでしょう。
脚注
本文は平成29年7月28日現在の税法等に基づいて作成しています。