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赤字会社への現物出資と受贈益

 

【質問】赤字同族会社への現物出資と無償貸付け

 

アベノミクス景気とは無縁な企業のオーナー経営者です。当社の業績は長らく不振で、当面の運転資金にも困る状況です。とはいえ、手をこまねいているだけでは経営者失格、もちろん営業上次の一手を実行中です。また経理面でも次の一手を検討しています。

 

A案:個人貸付金(法人の役員借入金7,000万円)を現物出資し、資本金に振替える

 

B案:A案の貸付金とは別に、新たに個人資産2,600万円を貸付け、銀行からの長期借入金を一括返済する。その貸付は無利息で実施する。

 

私の考えはいかがでしょうか。

 

資本金:1,000万円

繰越利益剰余金:▲7,025万円(債務超過▲6,025万円)

税務上の青色繰越欠損金:200万円

役員借入金:7,000万円

銀行借入金:短期借入金575万と長期借入金1,994万円

 

 

 

 

【回答】債務超過会社への現物出資は受贈益課税

 

税務上、A案の現物出資は、同族会社への寄付金と判断されるため法人側で7,000万円もの受贈益を計上しなければならず、多額の納税が生じます。一方、B案は法人の財政面を少なからず支援することができる良案だと思います。

 

 

 

A案について

 

A案は、旧商法上問題になることはありませんでしたが、現行の会社法に従い判断すると、株式価値0円会社(債務超過会社)への出資は、単なる寄付金になってしまいます。仮に、法人の通常の税引前利益が±0円であったとすると、この寄付金による受贈益7,000万円が加算され、繰越欠損金200万円を損益通算で控除しても税引前利益6,800万円に対し約2,300万円の納税が生じます。▲6,025万円債務超過状態ですが、青色繰越欠損金がたった200万円しか残っていなため多額の課税が生じます。

 

旧商法の時代に債務超過の同族会社は、役員借入金を現物出資で資本金に振替えても、法人税課税されることはありませんでした。この現物出資はオーナー経営者の相続対策を兼ねていました。しかしながら、会社法になってから、(同族の)債務超過会社といえども繰越欠損金残高をにらみながらの現物出資となります②。従って、A案は相続税対策にはなりますが、2,300万円もの法人税等の負担が生ずるため良策とはいえません。

 

 

 

B案について

 

良案だと思います。御社は、現金預金の残高が少なく流動比率が0.95と健全性の指標1.5を大きく下回っています。金融機関からの短期借入金と長期借入金との合計2,570万円を一括返済できたならば、毎月の資金繰りは相当改善され、外部利害関係者の評価も上昇するでしょう。これは、営業上の「次の一手」においてもよい布石になると思います。

 

無利息貸付であったとしても、事業規模・貸付額から金額的異常性は見受けられませんので、税務上問題となることはないと考えられます。

 

但し、一括返済するのか或いは部分返済にするのかは、くれぐれも金融機関と十分相談の上実行してください。

 

 

 

 

 

脚注

 

① 記事の内容は、平成二十八年七月二十八日付法令等に基づいております。

 

② 寄付金課税と判断されるケースは、今回のように、非公開同族会社のオーナーやその親族に係る貸付金の現物出資に限ります。