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食事代や娯楽費の経費性

 

【質問】食事代や娯楽費はなぜ経費にならないのですか

 

IT関係の個人事業で、自宅(賃貸)の一部を事務所として活用しています。

 

初めて参加した確定申告相談会場で、食事代や娯楽費、水道光熱費の大半は必要経費ではありませんと指導されました。納得できなかったものの、時間的な余裕がなかったことから、その指導者どおり申告書をしぶしぶ作成提出しました。

 

その説明は、「マンション賃料の一部及び水道光熱費の一部は必要経費として認められるけれども、個人事業に直接関係しない娯楽代、食事代、水道光熱費、電話代、衣服代等は必要経費として認められない」ということでした。しかしながら「腹が減っては戦ができぬ」というではありませんか、食事もとらずに仕事ができるはず有りません。また、映画やテレビ、ゲーム等の娯楽が無くてはいいアイデアも浮かびません。水道、ガス、電話、衣服なしでは仕事どころか生活にもなりません。

来年3月の申告では、昼食代・夜食代、娯楽費、水道光熱費、電話代、被服費などすべてを必要経費として控除するつもりです。いかがでしょうか。

 

【回答】残念ながら、その多くは必要経費と認められないでしょう

 

 ご質問者がお尋ねの、「昼食代・夜食代、娯楽費、水道光熱費、電話代、被服費など」は家事費及び家事関連費と呼ばれ、以前からの争いがありました。

 

 家事費とは「炊事・洗濯・掃除・育児などのような、家庭生活に必要な仕事」に使用される費用のことを言い、一般的に、衣服費、食事、住居費、娯楽費、教養費と説明されます。家事関連費とはこれらの周辺費用です。この家事費が必要経費として認められない理由は、家事費の支出は所得の処分・享受という性格であって、収入を得るための支出ではないからです。その指導員の説明は概ね適正であるように思います。家事費は所得を計算するうえで収入から控除できません。

 

 

 

家事費と必要経費の分岐点

 

とはいえ、ご自宅を事務所兼用として事業をされている場合、ある支出が、家事費に該当するか或いは必要経費に該当するか、の判断は簡単ではありません。例えば、家庭生活の一環としての食費代は家事費ですが、取引先とのミーティング時に提供した飲食代は概ね必要経費と認められるでしょう。娯楽・教養費についても、趣味での映画・本・ソフトウェア・通信課金などは家事費と判断されますが、事業のアイデアを得るために活用する映画・本・ソフトウェアなどは必要経費となるでしょう。

 

特殊なケースですが、スポーツ選手が普通の人より多く食べる食費、特別メニューや栄養調理師への報酬は必要経費となります。プロゴルファーが下見や練習のため自費でラウンドするプレーフィーも同様に必要経費となります。映画監督や映画プロデューサーの映画代や観劇費用も認められるように思います。

 

要するに、事業収入に伴う支出として合理的な理由があるか否かがポイントとなります。

 

 

 

ご質問者のケース

 

IT事業としてソフトウェア開発されていると伺いました。仮に、ゲームソフトウェアの開発であれば、ゲームソフト購入費や通信課金について事業上必要な部分については必要経費と認められるでしょう。また、電話などの通信費につき、約1/2程度をIT業務に活用されているとのことですので、通信費の半分は必要経費となります。家賃も、事業供用スペースに相当する金額を必要経費として控除できるでしょう。

 

但し、打合せ時の飲食等はほとんどなく、ほぼすべてが家庭生活の一環としての食事代とのことですので、家事費に該当します。衣服についても日常生活着のため購入したもので、事業専用のものはないということですので家事費に該当し、必要経費として控除できないでしょう。

 

 

 

脚注

 

①本文は平成28年6月24日現在の税法・判例等を基に作成しております。

 

②平成22年2月18日裁決、平成22年7月21日裁決参照。